皆さん、長谷川です。
新しい英語の会からメールを受け取っておられる方には間もなくお知らせいたしますが、本日(4月16日)から26日(日)まで、WEB英語リーディング大会を開催します。
このWEBリーディング大会は、コロナウィルスの感染拡大によって英語の会が対面で開催ができない間、毎月第3土曜日から9日間、このフォーラム上で開催します。(今回は課題の内容から、若干開催を早めています)
今回は、コロナウィルスの感染が拡大する中、世界的に注目されているフランスの作家アルベール・カミュの小説『ペスト』(1947年)について取り上げます。

と言いましても、この小説、200ページ以上ある作品ですので、このWEB英語リーディング大会では、小説のテーマである不条理について、カミュの考えを丁寧に解説している "Camus and The Plague" というYouTubeのビデオを参考にしながら、そのトランスクリプトを皆さんと一緒に読んでいきたいと思います。
(上の画像をクリックするとYouTubeの動画がご覧になれます)
ビデオのトランスクリプトと筆者が作成した課題(質問)および簡単な語彙の説明を載せたPDFファイルについては、4月16日付のニュースレターにダウンロード先のURLがありますので、そこからファイルを入手してください。(原著者の著作権保護のため、ファイルはフォーラムでは公開しません。また、ダウンロードできる期間は4月26日までになります)
今回の課題文は少し長いですから、全部を丁寧に理解しようとするとなかなか大変です。したがって、課題になっている下線部だけ精密に理解することにして、その他の部分については各パラグラフの大意(大体の意味)がわかる程度でよいと思います。
課題(問題)についてですが、課題1は下線部の日本語訳です。10問ありますから、お好きな3問について回答していただければよいです。(もちろん3問は基準ですので、それより多くても、また少なくてもかまいません)
課題2は課題文の内容理解に関連する4つの質問です。できましたら全部の質問について皆さんのお答えを考えてみていただけたらと思います。もちろん分からないところはパスしていただいてもかまいません。
※ 課題について考える際の参考として、Wikipediaの小説『ペスト』のページと「不条理」についてのページを紹介しておきます。よろしければご参照ください。
参加特典
英語リーディング大会(第1回)の回答を4月26日(日)までにフォーラムに投稿してくださった方には、カミュの『ペスト』の英語版(Stuart Gilbert 訳、全254頁)のPDFをメールにてお送りします。また、上記英語版を耳で聞けるサイトのURLもご紹介します。
※ ご自分の回答を公開したくない方は、筆者までメールでお送りいただいてもかまいません。
皆さん、この英語リーディング大会(第1回)にぜひご参加ください!
予告
このリーディング大会(第1回)に続けて、カミュの『ペスト』について、WEB読書会を開催します。
開催期間は、5月2日(土)~5月17日(日)です。
まだ時間がありますので、これまでにカミュの『ペスト』をお読みになったことがない方、また、もう一度読み直したい方は、この機会に原書(フランス語)、邦訳または英訳でお読みいただいて、WEB読書会にもぜひご参加ください。
みんなで一緒にフォーラム上で感想や意見、Q&Aを交換しましょう!
詳しくは、5月2日にお送りするニュースレターをご覧ください。
回答2.
①我々人間は、気づかないうちに疫病の間を毎日生きているのだ、という哲学を持っていたから。
②疫病そのもの以外にも事故や他人の行為によって突然命を落とすような脆弱性を人間が持っていること。
③脆弱な限りある生命であるがゆえに、隣人を愛し、少しでも災厄を少なくすることに努め、人生は我慢に値するもので、花を愛でたり、日没の美しさを眺めたりする繊細さを持ち、要するにdecencyをもって生きようとした。
④この世は不条理なものというのは、鴨長明や平家物語の無常観にも通ずるものがあるようです。一寸先は闇、板子一枚下は地獄という言葉もあり、隣人を愛し、自分自身も毎日を悔いなく生きることが必要と思います。
志村さんや岡江さんのような著名人の訃報に接すると一層感じます。
トットさんありがとうございます。ペストの中の人物はいずれも物語のための人物造形であって、いずれも極端な方が多いです。そのため、いずれにも賛成するには、違和感ためらいがあります。その違和感ためらいを大切にする生き方が大切であるとカミュは描いてある場面があったようですが、そうすると、戦争やペスト状態、死は違和感のかたまりですよね。平和という素晴らしいものは、戦争とは反対で、違和感ためらいを大切にして生活できるという素晴らしさがあります。そこが今回学べました。中庸、そこそこの生活、凡庸の大切さなど。だからこそ、こうして私たちは英語学習に打ち込めるし、お勉強だけは中庸を超えてとことんできる環境にあるということでしょう。せっかっくの平和のその環境をあまり生かしきれてない私ですが、自戒も含めて勉強をがんばります。
溝淵さんも、どうぞよろしくお願いいたします。
段落の10にある、as one might put it の意味が分かりません。「誰かが指摘したように」、でしょうか。
reikyou3007さん、参加とてもうれしいです。これからもよろしくお願いします。
1.
(1)彼はペストの構造と動物から人への伝染を十分に理解しており、何かが進行中だということを知っていた。
(2)カミュはとりわけひとつのペストについて書いたのでもなく、時々言われたような狭義での近年のフランスのナチ占領についての比喩的な話を書いたのでもなかった。
(9)市の上空に響く喜びの声を聞きながらRieuxは喜びとは常に恐怖の裏側にあることを思い出した。
2.
1 戦争に代表される人の上に降りかかる不条理さが疫病に似ていたから。
2 何の理由もなく戦争や病気で人が死んでしまうこと。
3 日々の仕事に打ち込んだり、身の回りの喜び、花の香やダンス、愛情などに注意を向けた。
4 ある程度賛成できるけど、何にでも意味はある様に思うので、全くの賛成はできない。身の回りの幸せに注意を向けること、日々の仕事に打ち込むことは賛成できるし、参考にもなると思う。
1.(7)しかし、安全なんてものはあり得ないんです。それ故に、カミュは言います。愚かな同士である人間を愛し、過度な希望や絶望感を抱いたりせず、災厄を改善するように努めることが必要なんですと。人生はホスピスであり、決して病院ではありません。
(8)疫病は、当然に報いを受けるべき人々に対する懲罰ではありません。それは、宇宙は道徳であり、ある種の設計図があるとイメージするべきなのかもしれません。
(9)R ieuxが、その町から沸き起こる歓喜の叫びを聞いたとき、この喜びは常に脅威にさらされているのだと思い起こしました。
(10)カミュは、人間の本質を正しく判断し、我々人間の根本的かつ不条理な脆弱性というものを知見していました。その脆弱性というものは、我々が普段思い出すことに耐えられないものでありますが。
1.(6)疫病であろうとなかろうと、いわば疫病のようなものはいつも存在するんです。疫病という名前をもって、人間が突然死しやすいことや、一瞬にして我々の生命が意味のないものになってしまったりすることを表すとしたら。
1.(5)そうです。誰もが疫病は西洋から消え去ったと思っていました。カミュが皮肉っぽく、死者以外の誰もがね、と付け加えましたが。
1.
(1)Rieuxは、疫病と動物から人への伝染の仕組みについての本をたっぷりと読んできていたので、何かが起こっているとわかっています。
(2)カミュは、特に一つの疾病について書いていたのでもなければ、時々指摘されているように、先般のナチスのフランス占領の例え話を念入りに書いていたのでもありません。
(3)我々が疫病にさらされているということは、我々の生命はカミュが名付けている「不条理」の縁に立たされているという見方そのものです。
(4)この疫病を前にしたオランの人々のように、我々は不死を当然のことと想定してしまっており、そしてこの無邪気さゆえにカミュが嫌悪する行動をとってしまいます。即ち、冷淡な心や、ステータスへの執着心、喜びや感謝を拒否すること、説教したり人を裁いたりする傾向などです。
以上
<<課題>>
1-(8) The plague is not punishment for anything deserved.That would be to imagine that the universe was moral or had some sort of design to it. 解:「ペスト」という作品は、神からの疫病という人類への罰ではなく、それを受けた人類の行いについて想起させるものである。 1-(9) As he listened to the cries of joy that rouse above the town, Rieux recalled that this joy was always under threat. 解:登場人物のRieuxは、街が解放された歓声を聞いた。しかし疫病の原因は街に存在しており、この脅威に終わりがないことを思い出した。 下線:課題文はroseでした。 1-(10) He correctly sized up human nature and knew about a fundamental and absurd vulnerability in us that we can not usually bear to remember. 解:作者は我々人類が本来持ちうる本性の強さと弱さを、疫病によって描き、それを忘れないように提示している。 2-④ 本作はペストという疫病を、突然の事故(不条理)と位置付けている。 私はその事故について、怒りをぶつけるのではなく、冷静かつ誠実に対応することが社会的な生活を営むにあたり必要だと考える。
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ごめんなさい、期日に間に合わないので、取り急ぎ投稿します><
カミュはペストの流行を最悪の不条理の一つと考えていますが、いま皆さんにお読みいただいている「課題文」には、彼が Great Plague of London of 1665(1665年ロンドンの大悪疫)についての文献を読んだことが紹介されています。
このロンドンでのペストの大流行のさなかにケンブリッジ大学の学生だったのが、あの有名なアイザック・ニュートン(1643年 - 1727年)です。
ある方に教えていただいたのですが、『文芸春秋』の5月号の中で数学者の藤原正彦氏が次のように書いているそうです。
「ニュートンはケンブリッジ大学がペストの大流行で休校になった一年半の間に、故郷に帰り思索を重ね、微分積分と万有引力を発見した。誰もがニュートンになれないが外出を控える間に読書文化が復活すればよいと考える」
コロナ禍の真っただ中にいる私たちにとって、過去に先人も同じような困難を乗り越えてきたことを知ることはとても勇気づけられますね。
※ Great Plague (of London) は、リーダーズ英和にも「ロンドンの大悪疫《1665-66 年に起こった腺ペストの大流行;人口 46 万人のうち死者 7 万人以上という》」という説明が載っています。
こんにちは。本当に「私なり」の日本語訳と、答えです。よろしくお願いいたします。
課題1
(2)カミュは1つの疫病に特定して、しかも詳しく書いていたわけではなかった。時々言われていることだが、カミュは当時のナチのフランス占領を比喩する物語として、これを書いていた。
(5)「ええ、皆は伝染病が西洋から消え去った、とはわかっていました」カミュは冷笑して言葉を続けた。「でも、死が消滅することはない」
(9)町中からわき上がる歓声を聞きながら、リウーは、この喜びは常に、我々を脅かすものに支配されているのだ、と思い出していた。
課題2
①当時のナチのフランス占領の比喩として、書き残しておくべきだと考えたから。
②無防備な我々を支配している、避けがたい現実。
③誠実さのもとに、自分の務めを果たす。
④人生は思い通りにならない。いつ、どんな脅威が襲い掛かって来るかわからない。でも、その敗北を認識することは戦いを放棄することではない。認めながら、誠実に自分に出来ることをする…と、気付かされました。今だからこそ、自分に出来ることは何か?自問する良いキッカケになりました。また、視聴した番組の中の「連帯」という言葉にもハッとさせられました。この事態に陥ってから、他人を非難する声をどれだけ耳にしたことでしょう。しかし、今こそ、我々は連帯して、「コロナ時代」を乗り越えていかなければならない、と思いました。非常に非常に、今の私の心に響いた小説でした。参考になりました!
以上、拙い文章で失礼いたしました。 遠藤
今、第四回を見てます。英検準一級では少し難しいところもありますが、がんばってます。
皆さん、長谷川です。
英語リーディング大会(第1回)の課題、取り組んでおられますか?
内容が文学や哲学についての話題ですので、理解しにくいところがあるかもしれませんね。
そこでご参考として、NHKが以前に「100分de名著」という番組で放送した、カミュの『ペスト』のビデオ(YouTube)をご紹介したいと思います。
放送は各回が約25分で4回ありますので、全部見るにはタイトル通り100分ほどかかりますが、内容はとても分かりやすくて面白いです。
課題文の筆者の考えと少し違うところもありますが(特に第3回と第4回)、このビデオは今回の課題を考える上でもとても参考になると思います。
よろしければご覧になってみてください。
下にYouTubeのURLを貼っていましたが、残念ながらビデオが削除されてしまいましたので、リンクを削除しました。この番組についてはNHKのオンデマンドで見ることができます。また放映当時に「100分で名著 アルベール・カミュ『ペスト』 NHKテキスト 中条省平」というテキストが発売されましたので、番組の内容はこのテキストでも確認できると思います。(2020年4月25日 Mr. Spock 追記)
第1回
第2回
第3回
第4回